ストーリーは、新しい石油だ

物語は新しい石油だ Story is the New Oil 櫻田潤 1

データは石油なのか

データは新しい石油だ(Data is the New Oil)

この言葉をはじめて聞いたのはいつだっただろう。はっきり覚えているのは、2010年にTEDで『データ・ビジュアライゼーションの美』を見た時に、このフレーズが出てきたこと。

当時は、(たしか)「ビッグデータ」「ビッグデータ」とやたら叫ばれていた頃で、データは巨大な富とパワーを生む石油にたとえられるようになっていました。

それから8年ほど経って、今度は「人工知能だ」「機械学習だ」と叫ばれる中で、その性能を上げるのにデータがキモになることから、再び「データは石油だ」と耳にする機会が増えました。

データが石油だとしたら、たくさんのデータを持つGoogleやFacebookはさながら石油王で、彼らがこれからの世界の覇権を握り続けるのは約束されたことのようにも思えます。

巨大テック・カンパニーによるデータ寡占に、逆転の余地はないのだろうか。

物語は新しい石油だ Story is the New Oil 櫻田潤 2

ある日の夕方、僕はコルクの佐渡島庸平さんと一緒に歩きながら、このテーマで話をしていました。

その時、佐渡島さんが印象深いことを言いました。

データは石油だと言われるけど、そうじゃなかったら? データ以外につぎの石油にあたるものがあったとしたら、どうなるだろう?

この問いをおもしろいと感じながらも、その場ではとりとめのない返事をしただけでした。「たしかにデータ以外に石油に相当するものがあれば、GoogleやFacebookをひっくり返す存在が生まれるかもしれませんね」云々。

根源的な欲求

別の日、僕はこんなことを考えていました。

なぜ人は情報を生み続けるのだろうか。なぜ人は情報を求めるのだろうか。

情報爆発と言われて久しく、消化し切れないほどの情報にあふれ、そこにフェイクも混ざり、僕らは右往左往。そんな状態なのに、SNSを開き、さらに情報を得ようとするのは、なぜか。

頼まれもしないのに、情報を発し、頼まれもしないのに、情報を求めてしまうのは、なぜか。

「もうたくさんだ」と感じながらも、絶えず情報と接しようとするのは、人間が根源的にそれを求めているからとしか思えません。

人間は本能的に、情報を求める生き物なんじゃないだろうか🤔

虚構のパワー

『サピエンス全史』(ユヴァル・ノア・ハラリ著)に、ホモ・サピエンスをホモ・サピエンスたらしめ、他の動物と違う存在にしたのは、虚構(神話)を創り出す能力だとありました。

そうやって生まれた虚構の代表格が『聖書』で、政治家や起業家が語るビジョンも、その一種と言えます。

大きな虚構によって、大勢が協力する状況が生まれ、人間は力を持ちました。

サピエンスは、無数の赤の他人と著しく柔軟な形で協力できる。だからこそサピエンスが世界を支配し、アリは私たちの残り物を食べ、チンパンジーは動物園や研究室に閉じ込められているのだ。─『サピエンス全史』より

人間を特徴づける能力が「虚構を生み出す力」「神話、物語を生み出す力」だとしたら、僕らが情報を欲してしまうのも納得できます。

情報は、物語のひとつ下層のコンテンツとも考えられるからです。「データ」に関係性が加わることで「情報」になるように、「情報」に文脈や想像が加わると「物語」になります。

データ 情報 物語 櫻田潤

人間は、物語を創り出し、物語を信じる特性を持つため、その手前に位置する情報に対しても、それを求める気持ちが働くのではないか。

「データ」「情報」「物語」の3層のうち、一番手軽にやりとりできるのが「情報」だから、ついつい手を伸ばしてしまうのではないか。

ストーリーは、新しい石油だ

「Data is the New Oil」と聞く度に、データを収集する基盤を持たないと、世界を変えるゲームに参加できないのかと、つまらない気持ちになります。

でも、もしかしたら、「データ」や「情報」を超える存在である「物語」にならば、なにか奇跡を起こす可能性はあるのかもしれない。佐渡島さんとの対話や『サピエンス全史』を通じて、そう思うようになりました。

聖書レベルの大きな物語でなくても、いまなら無数の小さな物語が束になって波及することもできそうです。

僕はこれまで、「データ・ビジュアライゼーション」や「インフォグラフィック」制作を通じて、「データ」や「情報」に関わってきました。それらのフィールドにおいては、テクノロジーの関与が増えてきたのを感じます。

これから僕がやりたいのは、漫画、絵本、イラスト、映像…そういった創作を通じて「データ」や「情報」以上のものを伝えること📚🎨🎥

「データは新しい石油だ(Data is the New Oil)」の言葉のもとでは、テクノロジーに従うほかありません。テクノロジーを活用し、従えるには、別の旗が必要です。

僕はそれを「ストーリーは、新しい石油だ(Story is the New Oil)」として、アプローチしていこうと思います。

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