デザインの観点から、アメリカの選挙を楽しみにしています。大統領選ほどではありませんが、先日の中間選挙(※)でも様々なデザインを見ることができました。
たとえば、候補者のキャンペーンロゴの比較。
「Center for American Politics and Design(CAPD)」がサイトにまとめています。

このサイトでは、「色」や「文字の種類」「モチーフ」「議員の性別」などでロゴを絞り込めるようになっています。
試しに「色」を赤、「文字の種類」をサンセリフ(ゴシック)で絞り込んだ場合はつぎのようになります。
キャンペーンロゴは、視認性、他の候補者ロゴと区別できること、SNS映えなどを気にする必要があります。
その視点で見ていくと、国旗にあわせた赤青のロゴは、候補者間の区別がつきにくいと感じます。
全体の中で、一番要件を満たしていると感じたのが、ジャッキー・ローゼン。
色は民主党のブルー、モチーフには出馬先のネヴァダ州のシルエット。その形に合わせて、名前と上院を示す「Senate」の文字を斜めに配置しています。
サイトでは次のように使用されていて、視線を登録フォームに導く役割も担っています。
かつてはヒラリーが
同じように、展開時の視線の流れを考慮したロゴを用いたのが、2016年大統領選のヒラリー・クリントン。
キャンペーンロゴは、ヒラリーの頭文字「H」と矢印を組み合わせたもので、モチーフの矢印を使ってメンバー登録や寄付の誘導を兼ねていました。

このロゴのデザインに協力したのは、著名デザインスタジオ「ペンタグラム」のマイケル・ビアラットでした。

マイケル・ビアラットは、MastercardやMITメディアラボなどのリブランディングを手がけた人物です。


ヒラリーは一流のデザイナーを味方にしていました(選挙には負けましたが)。
悪しき事例
選挙戦において、デザインやビジュアルの力をネットで活用する動きが見える中で、ミスリードに使用されるケースも生まれています。
Washington Postが指摘した、トランプ大統領のSNS投稿です。

たとえば、彼がTweetした次のグラフは、43%と45%で僅差のはずなのに、トランプがヒラリーよりもだいぶ優勢に見えます。

(1)ベースラインに注目
棒グラフを使う際は、ベースラインを0にして作成する必要があります。画像の一番下を0とした場合に、43%と45%の差はわずかです。正しいグラフと高さを比較すると、投稿画像が間違った印象を与えていることがわかります。
(2)フォントに注目
トランプのフォントがクリントンに比べ、大きくなっています。さらに、クリントンは名前が右下に下がっていて、落ち目な印象が演出されています。
こうしたグラフ操作は一件にとどまらず、Washington Postの記事で検証結果を見ることができます。
インフォグラフィックの活用
政治家は多くの層に情報を届けるために、デザインやグラフィックの力を用います。オバマ前大統領もその一人で、在職中にホワイトハウスのサイトやSNSでインフォグラフィックを活用していました。

政治家に限らず、メディアも選挙報道でインフォグラフィックを利用するのが定番になっています。
今回の中間選挙報道でも、各メディアは政党の争いをグラフやマップで表現していました。
数年前はモバイル表示がおろそかにされていましたが、いまでは多くのメディアがモバイルでも見やすいように最適化しています。
また、大統領選だけでなく、2016年のイギリスのEU離脱(Brexit)を問う国民投票の際も、各メディアがグラフやマップを用いていました。

大きな選挙があるときは、デザインにも注目するとおもしろいと思います。
※ 米中間選挙とは大統領選の間の年に実施される選挙。上院・下院の議員を決める。2018年は、上院100議席のうち35議席が改選対象、下院は435議席すべてが改選対象。大統領選と比べ、投票率は低い(参考データ)。